【代表の想い】vol.22[平成21年 熊本全国大会]


皆様こんにちは。清水園でございます。

前回、造園感謝祭においてカリスマ庭師’御手洗さん’と大分県の現場を見せていただくお約束を果たした代表。今回お送りいたしますのは、平成21年 熊本全国大会及び御手洗さんの手掛けられたお庭のお話でございます。


「全国から200人は集うにぎやかな会です。宮城県からは15名程大分に行くこともあったので多くの参加者がいました。和気あいあいとした会場の空気などとても楽しい思い出です。


全国大会では、前回お伝えしたとおり、当番県の方と関わり日頃見ることのできない個人宅のお庭やホテルなどの共用地を見せていただくことももちろんできたのですが…私としては、やはり大分で御手洗さんの手がけられたお庭を拝見したい…という思いが強かったので、熊本城を見学させていただいた後、すぐに大分へ移動し御手洗さん直々に現場をご案内いただきました。」


御手洗さんの作風の特徴は、庭に’水を流す’ところ。


「水というのは、庭を作る上で一番扱いが難しく失敗も多い要素です。お庭ですから基本的に市水を流しますので、失敗すればお金を流すのと同じものです…コンクリートで固めたり、防水シートを貼ったり…流すための工夫は色々あるのですが、それら工夫を施せば施すほど、作り物のようになってしまいます。流しても不自然だったり、上手く流したいがために型にはまってしまったり。

ですが、御手洗さんの庭やそこで流れる水は作った感じがほとんどありません。これにはどの現場を拝見しても感心しきりでした。」


御手洗さんご自身は庭師としてのデビューが30歳と、業界としては早くないスタートだったそう。一方で、幼少期を山奥で過ごされ通学路で日々水の道を通われていたことから、「私にとって水が一番の友だち」と自負されるほど水や自然の原風景が記憶に刻まれていたそう。


「’おおいた人と緑ふれあいいち’で御手洗さんが手掛けたモデル庭園をはじめ、湯布院の旅館のお庭や個人宅のお庭まで、露天風呂や滝…それらがあちらこちらに配されていました。個人のお庭の中に露天風呂があるというのは斬新で勉強になりました。

九州という地域柄もあるとは思いますが、風呂に入った視点で庭を作る・出来上がっている…というところは、御手洗さんの作風の一つですね。」


高い技術力が必要な水の扱いや自然の原風景を庭に持ち込むなど…お写真を拝見しながら御手洗さんの手腕に思わず感嘆の声が溢れます。


「石・木・苔・水…それら要素がまとまり庭が出来ますが、御手洗さんの頭の中にはそれらの配置やそれぞれの関わりといったものが、全て記憶・身体に染み付いておられるようでした。また、どこへ出向くにも作務衣、頭にタオルを巻いて地下足袋で移動される。

どこにいても何をされていても、庭師である御手洗さんのスタイルは、人としてもとても好感を抱きます。」


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「御手洗さんが庭に水を流したり、自然の原風景を作られる…その技術力の高さや感性に尊敬の念を抱くのはもちろん、御手洗さんのすごいところは現場で使う資材をご自身の山から持ってくる…というところなんですね。」


なんでも、御手洗さんは庭を作るにあたって3つの山をお持ちだったそう。’庭石を取る山’、’木を掘る山’、’竹材を取る山’…素材を自給自足されるといっても、料理人が食材を栽培する規模を遥かに凌駕しています。


「木の場合は、市場で木を買ったり…という事が業界で多く見られますが、御手洗さんの作られるお庭はやはり’作られた感じのないところ’が魅力。市場で競られる木々は綺麗ですが、やはり’いかにも庭木’というものがほとんどです。雑木、いわゆる曲がった木を大胆に使われるスタイルも御手洗さん流ですね。」


そう、例えば旅館のお庭にある四阿(あずまや)はじめそこに繋がる渡り廊下を見ていても、その特徴が伝わってまいります。渡り廊下の柱に使われている木は躍動的に曲がっており、四阿の小窓を見ても曲がった竹が自然にかつ装飾的に使用されています。


「山から切った木をそのまま使っているとういう大胆さ…’山の中にある旅館に真っ直ぐな木を使う意味がない’と、伝統的なものが普通だとする概念では目からウロコの発想です。御手洗さんはこういった大胆な仕事も手がけられる一方で、四阿の作りは非常に緻密。このように、子供のような伸びやかさと職人の繊細さを兼ね備えている方はなかなかおられません。」


例えば、庭に’滝を作る’という大胆さの一方で、御手洗さんは滝口の後ろは真っ暗になるよう仕上げるとのこと。というのも滝口の後ろが「どうなっているのか」想像させる…御手洗さんのお言葉を借りると「庭師は夢をつくって何ぼ」。

滝口の後ろに植栽をしたり、切り立った石を置き入れないように隠したり…そういった実際的な技術や発想で、人々に庭を心から安心し楽しんで夢を見てもらえるように作庭を手掛けておられるのです。



「伝統的・正統的なスタイルを好まれる方にとって、御手洗さんのスタイルや手法は好き嫌いが分かれることも事実です。ですが、御手洗さんにお会いするまで独学で造園に取り組んでいた私にとって、御手洗さんとの出会いはまさに衝撃的で、既成概念を一気に覆されましたし方向転換をせざるを得ませんでした。

大分でご本人からお話を伺いながら、実際にお庭を見せていただいた事も非常に良い勉強の機会になりました。この機会以降も数々の現場を手掛けましたが、やはり御手洗さんから受けた影響は大きかったですね。

御手洗さんが幼少期に見た水や自然の原風景を、庭を通して発見し自身の学びへと繋げられるのはとても幸せなことです。」


庭が繋いでくれた人と人の出会いは、また新たな庭造りへと繋がり、日本の庭の歴史を紡いでいくことになるのかもしれません。