【代表の想い】vol.27[青葉区 K邸 藤棚更新]


皆様こんにちは。清水園でございます。

さて、前回「日本造園アカデミー会議」のお話をお伝えいたしましたが、オンラインでの催しや交流が中心のこの頃において、ふと… ’御用聞き’ を生業にされている方々もまたこの時節において様々な工夫をされているのだろうなと思うことがございます。


‘御用聞き’…商店などがお客様のご自宅へ訪問し用事や注文などを聞いて回るお仕事ですが、そこで培われる顧客との信頼関係というのは仕事を超えた人情深さがございます。

本日お伝えしてまいりますのは、そんな心温まる現場でのお話です。


「造園の仕事をしていると、弊社の初代から…およそ50年のお付き合いをしているお客様もいらっしゃいます。先日お伺いした青葉区K邸もそのうちの一件。

私自身が初めてお宅へ伺ったのは施主様が60歳の時でした。現在は90歳、とはいえ現在も会社へ通われお仕事を手がけられるとても凄い方です。」


そのK邸のお庭には立派な藤棚があり、この度作り直しのためにお宅を訪れたとのこと。


「私が手掛けてから、今回3回目の作り直しとなりました。平成24年…震災の後に上の竹のみ交換していたのですが、流石に9年経つと竹や柱も古くなっておりましたので、全て交換する運びとなりました。」


藤棚は丸太で柱を作りその上に組んだ竹を載せており、それぞれ経年劣化の状態にあわせ別々に交換することが出来るのだそう。


「交換の方法は職人によって異なりますが…私は先にサポートパイプで藤棚を支えてから、蔦が落ちてこないようにチェーンソーで柱を切っていきます。その後サポートパイプを伸ばして作業スペースを確保し、新しい柱を立て丸太で梁を作ってく…という方法をとっております。


材料に関しては予め準備しておきます。特に竹は、10月から3月の間の冬の期間に切ったものを材料として使用します。また、丸太も耐久性を高めるためバーナーで焼き炭化させておきます。触っても手が黒くならない程度に仕上げますが…その分しっかりと焼き込むことが必要です。」



完成した藤棚のお写真を拝見すると…確かに、しっかりと焼きこまれた柱が凛として印象的です。


「柱も梁も…このお宅は最高級のものを使用しています。本当に良いものをご存知の、いわゆる’文化人’のお客様です。

その昔、職人はお客様に育てられる…という文化がありました。間違いをきちんと指摘してくださる、そのお叱りがあって職人もさぼったりごまかしたり、ということがありませんでした。

また、少しばかりの失敗は成長の過程と受け止めでくださる懐の深さにも、現場の度に ’育てて頂いているなあ’ と実感がありました。」



親や先生とはまた違った愛情が、一人の職人を育てていくのですね。


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「藤棚交換と併せて、竹垣の交換も行いました。諸々現場の兼ね合いで、本来であればもう少し早く作り直したかったのですが…とはいえ施主様から ’竹の古くなる姿も美しい’ と言っていただけるので、なんとも救われる次第です。」


素敵なお客様ですね…さて、着工前後のお写真を拝見していた際、着工前垣の向こう側にあった石が着工後にはなくなっていることに気づきます。


「そう、こちらなのですが… ’大谷石’ といって、塀をはじめ薪ストーブやピザ窯などにも使われる、火に強い人気の石なのです。

施主様が震災後、大工さんに玄関を直した際に踏石を外して施工し…垣の向こうに置いたままにされたそうなのです。」

そのまま、その大谷石を他の場所に再利用された…という事でしょうか。


「そうですね、大谷石の古材は色などが落ち着いた感じで庭に使用しても主張しないので、最終的には通路の敷石に使用しました。しかしながらこの石、20cmの厚みと80kgの重さがありましたので…大人3人でなんとか運び出しました。」


石とはいえ一つ運ぶのにもやはり相当な労力がかかりますね…とはいえ、敷石での利用とあれば20cmの厚みはほとんど土に埋まってしまいそうです。


「通路の扉の前に設置しましたので、実際表面に見えているのは3cm程度です。ですが、ここが敷石の大切な点でして、表面に見えるだけの厚み…例えば3cm程度やそれ以下の厚みの石を使用すると、多くの場合人間の荷重に耐えきれず土が下がり、石自体が割れてしまう事もございます。


下をコンクリートで固めてしまうという方法もありますが…やはり見えない部分にある石があるからこそ出てくる、本物の存在感や重みのようなものがあるように感じます。」


まさに…庭やそこに使用するものは施主様を体現するのかもしれません。風流でいて粋。大谷石を見ているとそのような感慨を覚えます。


「敷石を設置後、施主様が戻られてこれをご覧になった時はとても喜んでくださりました。4月の施工でしたが、 ’10月に剪定に来てね’ と帰りに見送っていただけて…大変嬉しい限りでした。

造園の仕事は木を切るだけでなく様々な仕事がありますが、こうやって関係が続いていくのは我々と施主様が互いに同じ方向を向いているからこそ。今後もこの関係性を大切にしていきたいと思います。」


仕事あってこそ、とはいえ人と人同士、信頼関係の上に成り立つものがあるように感じます。