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【代表の想い】vol.63[法面石積み・植栽 2期工事]


皆様こんにちは。清水園でございます。

年末年始、ご自宅をはじめ暖かな屋内から外の景色を眺め季節を感じておられる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。


弊社コラムでは、造園業にまつわるトピックスや代表の哲学感など様々な角度から‘造園’や‘庭’についてお話をお伝えしておりますが、本日はそんな弊社代表の「庭づくり10年計画」の一端をご紹介致します。


過去当コラムでもご紹介致しました「畑石積み」。こちらは、東日本大震災の翌年、代表が敷地の全面改修を思いつき10年間・毎年1月に改修を進めていく…その足がかりとなった施工でございました。


「今回お話しするのは、その‘畑石積み’の2期工事についてです。我々の仕事では、避けては通ることのできない3つの要素・制約がございます。それが‘予算・工期・施主の好み’なんですね。いずれか一つでも少々の不足があれば、‘私(代表)はもっとこうしたかったのに…’という庭ができてしまいます。


本当に納得のいく庭を作る為には、材料探しの為の時間をはじめ、それを使うための予算も必要になることは然りです。


自身の庭を施工する分には、ありがたいことにそういった制約はございません。やはり自身がこだわり抜いて納得のいくものを作るからこそ‘心地のいい庭’が出来る。もちろん、日々の仕事もございますから…毎年1月・1ヶ月は休暇と庭づくりに没頭しようと決めたのです。この工事は、平成26年・3回目に手がけたものですね。」


計画としては、丸太で仮に製作した階段を作り直し、ただ植栽を施していた法面を石積みにする…といった内容だったそう。着工前・完了時とでは、やはり法面の石積みで印象が大きく異なります。


「元々法面には、現場で余った植物を再利用するなどして植栽を行なっておりました。植物も好き放題伸びていた印象だったところを整地し石積みを行いましたので…すっきりと致しましたね。」


また、元々あった階段も蹴上高を低くし、段数を増やすことで緩やかな坂道のような階段に仕上げられたとの事。石積みはただ石積みを施しただけでなく、天端に植栽帯を作ることで石と木々とが調和をおりなしています。


「実は、セオリーとしては石積みの前に植栽を行うことは…石積みを隠してしまう為NGとされていました。しかしながら、家の窓から眺めた時に見える景色は一面が石積み…やはり植物があるのとないのとでは柔らかさが全く異なります。


また、当コラムでも何度かご登場されている造園家・御手洗さんにお会いした際「山は石の前に植物があるのは当たり前。植物で隠してしまうからいけない。」と、自身の中でセオリーは覆されました。最初は植栽帯に小さな苗木を植え、成長したらだんだんと間引いていく…石積みとの塩梅を見ながら剪定を行うよう、引き算の植栽を行いました。」


本来であればこの2期工事の後、石積みの奥に御手洗さんに「うちにも滝を作ってもらいたい。」というお話だったそう。残念ながらそれが果たされることありませんでしたが、御手洗さんの造園家としての姿勢は代表の想いに今も強く反映されています。


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「我が家には鯉のいる池がある為、石積みを行う際には次回濾過槽を移設するため給水と排水パイプを配管してからの石積みが必須です。

濾過槽は、池から濾過槽に水を入れるパイプ・濾過槽から池に戻すパイプ・汚れた水を捨てる為のパイプ…3本が必要です。

また電気の配線も取っておかなければなりません。石積みは最終的に2〜3m程の高さになりますから、積んでからの配管はとんでもない程に大変なことです…。

植栽もございますので、工程・景観・他条件上邪魔にならない場所に配管する必要があるのです。」


また、これはどの現場にも言えることなのだそうですが…土や石の移動はかなりの作業量になる為、どの順番で入れれば機械を最後まで現場に入れることができるのか、という事も計画し作業を進める必要があるとのこと。


「今回は石を積んだ上でユンボが作業しますで、石積みも抜かりなく積んでおく必要がございました。しかしながら、建物と石積みとの通路はさほど広く無く、弊社のクレーンは入ることができません。ですので、25トンクレーンを建物越しに配備し建物を乗り越えるように石積みを行うことに致しました。」


建物を乗り越える…筆者は一瞬耳を疑ったのですが、実際のお写真を拝見し思わず言葉を失うのでした。まさに代表の言葉通り、長いクレーンは2階建の屋根を跨ぎ石を現場に降ろしているではありませんか。


「当然のことながら、オペレーターは現場でどのような状態か目視できません。ですので、イヤホンで無線を通し‘左右上下’といった内容を指示していきます。

オペレーターはウェルコムの石積みなど数々の石積みを担当した25年来のクレーン仲間ですので、信頼して作業を進めることができました。清水園の石積みは彼あって成立するといっても過言ではありません。」


そんなオペレーターと代表の長年培った意思疎通の甲斐あり、見事石積みも仕上がりました。石積みが全て終了した後は、現場のユンボもクレーンで吊って回収するとの事…筆者の想像を超えたスケールの内容が現場では繰り広げられていたようです。



「現場で使用している石は、それこそ震災後各所庭から解体して出てきた石を再利用しているのですが…‘俺を使ってくれ’と言わんばかりの、不思議なご縁を感じる石の組み合わせがほとんどです。

例えば、階段の裾に設置した鳥海石。この高さや幅は敷石では成立し得ませんし、また足を乗せても挫くことのない絶妙な大きさです。


また、角石もまるで元々一つだったかのような相性の石を使うことが出来ました。植栽で見えにくくはなってしまいますが、こういった細部に魂は宿りますから…自身の庭とはいえ(また自身の庭だからこそ)手を抜くことはできません。

一方で、お客様の現場で使用する前に野蒜(のびる)石を敷石として敷いてみるなど、実験的な試みを出来るのもまた自邸の良いところです。」


計画はしばらく続きます。また折に触れお伝えして参りますので、どうぞお楽しみに。


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