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【代表の想い】vol.69[倉庫新築]


皆様こんにちは。清水園でございます。

さて、2022年3月に発生しました弊社の倉庫火災から早くも1年が経過致しました。

折に触れ、新しい倉庫の建築に向け仮倉庫や棚の製作、資材の調達といった経緯を皆様にお伝えして参りましたが…いよいよ、清水園の新倉庫が完成致しましたのでここでご報告差し上げます。


先日お送りしたコラム「倉庫新築 材料」におきまして、代表が林業を営む友人から7m60cm・7m20cm、直径40cm、重さ約700kgのケヤキとスギの3本に加え、5m少々あるケヤキやヒノキの角材数本を譲り受けたところから、それを元に図面を一気に仕上げたお話から、資材として使用できるようになるまでの加工に至るまでをご紹介致しましたが、その資材を元にいよいよ建前を行って参ります。


「新しく出来る倉庫の高さですが中は約6m50cm・外は約7mありますので、クレーンで吊り上げ資材を下ろし建前を行います。」


入り口柱の建て込みからのスタートですが、人が隣で支えている様子から柱の太さ・大きさが伺えます。


「通常、入口に使用する柱は3寸5分から4寸程度ですが…こちらの柱は7寸・21cm角ございます。大きさだけでも約2倍、入口どころか大黒柱クラスの太さですね。通し柱に関しましても通常は4寸角のところ1尺ございますから、普通の柱の9本分です。」


柱や土台には全てヒノキを使用されているとのこと。ここまでの太さが必要なのは、何よりも代表が惚れ込んだケヤキとスギを支える為…確かに、棟となるケヤキは直径40cm・全長7m・700kg…この重量を支えるには柱や梁も相当の強度がなければなりませんね。


「棟上げの後、棟木自体が真っ直ぐではありませんので束柱を立ててもう一段棟を上段に上げ水平を取り屋根を平らにして参ります。

この段階で組み上げた建物の外見は真っ直ぐ建っているように見えるのですが…屋起しを行い垂直を整えます。机上の計算ではあっていても、ホゾの入り方で微妙な傾きも生じているものです。

‘下げ降り’と呼ばれる糸におもりをつけたものをぶら下げ、おもりの中心が柱の中央に来るように垂直をとります。水平に関しては水平器を用いて測っていくのですが…この段階で西側に12mm・東側に32mmと捻れるような形にずれておりました。


使用している部材は全て非常に太いですから…手で押して曲げられるものでもございません。ワイヤーで荷重を掛け引っ張り整えて参ります。私自身現場でもよく使用するチルホール(写真内緑のロープとワイヤーの部分)を使用しているのですが、滑車さえかければ上下左右どこでも引っ張ることが出来、重量物の運搬や木を倒す時など大変便利な道具です。」


部材を引っ張る最中は、それは大変な音がするとの事…しかしながらここで少しでも傾いた状態で壁を貼ってしまっては台無し。大掛かりながらも繊細に作業を進めて参ります。


「建物の傾きを整えた後は、仮筋交を打ち固定しておきます。屋根板を張り…ここまでで3日です。それまでに45日間、大工さんが新しい車庫にこもって木材を寸法通りに切ってくださっていたおかげで、作業もスムーズに進めることができました。」


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建前も順調に進み、本筋交を入れ固定した後は柱などを塗装して参ります。


「建物は全て木材ですから防腐剤の塗布も含めて、壁を貼ってしまう前に塗装を施します。」

作業工程上、壁を張った後の塗装はマスキングなども非常に手間がかかります…よりスムーズに進行するよう、社員はじめ代表も直々に塗装して参ります。


塗装後は壁の張り付け。代表曰く「全て板張りに仕上げたかった」との事ですが…コンプライアンス上避けられない為、やむなく防燃材を張りその上に板を張ることになったそう。「金具が見えてしまったのが残念でなりません…」と残念がっておられました。


さて、鴨居を取り付ける段階になり改めて入り口を正面から拝見すると…ここにも代表のこだわりが見受けられます。


「通常、入り口は土台の上に柱が乗りますからコンクリートが見え、柱はそこで途切れてしまいます。ですが…コンクリートが見えている状態ですと味気なく殺風景になると思い、土台のコンクリートを被せる形で柱をくり抜き、開口部は柱が地面まで届くような設計に致しました。柱が太い分、構造上重量を支えるのにも全く問題はございませんでした。」

代表のこだわりある分、非常に重厚感のある仕上がりです。


「外壁は上部を漆喰、下の部分は板張りに致しました。本当は板張りの箇所をなまこ壁(平瓦を壁に貼り付け目地を漆喰で仕上げる手法)にしたかったのですが…‘あまりに大変で面倒だ’と左官屋さんに断られてしまい、やむなく板張りとなった次第です。漆喰の下地から塗りは社員含め我々の手で仕上げました。造園業ながら漆喰までそれなりに仕上げられたのは植木屋ならではかもしれません。」


また、入り口の扉も新入社員がマスキングを行い、市松模様に塗り仕上げたとの事。手先の器用さが生かされ見事な仕上がりです。


「たとえ少しの作業であったとしても‘自身で手がけた’というやりがいや誇りは、後々の自負や功績に繋がって参ります。改めて完成した倉庫を見ると…やはり非常に感慨深いものがございますね。最初、全てが燃え尽きてしまい‘プレハブでも良いか…’なんて肩を落としたこともございました。

しかしながら、やはりモノの力は素晴らしいもので、林業を営む友人から見せられたケヤキとスギが、全ての原動力となりこの倉庫が完成するに至りました。


やるところは徹底的にやる、倉庫も弊社の復興の象徴として…かけがえのない一つの作品として仕上げることができました。蔵を建てるのも夢の一つでしたから、その夢が叶っただけでなく…私の自宅も木造の為、似た建物が敷地内に出来たことで敷地内全体に統一感が生まれました。


一つの出来事を悪きものと捉えるか、好機と捉えるか…その後の自身の振る舞いにより作り生み出されたものが‘良いもの’であると、そこにまた‘良い流れ’が入ってくる。この倉庫から、また清水園の歴史を紡いでいきたいと存じます。」


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