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【代表の想い】vol.59[庭師会九州研修会]


皆様こんにちは。清水園でございます。

本日お伝えして参りますのは、代表が所属する「庭師会」にて平成25年に執り行われた「九州研修会」のお話でございます。


庭師会は、昭和51年に発足した庭師の伝統技法の研磨・継承をはじめ、庭師自身の精神性を高める事を目的とした会でございます。そこでは年に一度庭の見学を主とした研修会が行われ、様々な地域の実例を元に庭師の方々が見聞を深めて参ります。


「平成25年に九州が選ばれたのには、当コラムでも度々お話ししているカリスマ造園家の御手洗さんがきっかけとなっております。御手洗さんは平成18年・20年と石組講習会で宮城にお越しいただいておりますが、その講習会で敷地を提供してくださったのが庭師会会長の齋藤千明さんだったのですね。庭師会から庭の見学を行うにあたり、‘御手洗さんのお庭を見学させて頂こう’という事で晴れて九州への研修会が決定した次第です。」


研修会は3泊4日、6月1日から4日にかけて行われました。


「初日は福岡に入りました。あいにくの雨模様ではございましたが、暑すぎず寒すぎず…名所やお庭を拝見するにはいい頃合いの気候です。最初に拝見したのは柳川・松濤園(しょうとうえん)、1967年4代目藩主の立花鑑虎(たちばなあきとら)により構えられた近代庭園です。こういった庭園は財団法人などになってしまうことがほとんどなのですが、現在は18代目立花氏が受け継がれているとの事。

池には仙台松島の島をイメージして石が配してあるのが特徴です。1500個を超える庭石が配されており、その敷地面積の広さやスケールの大きさが伝わって参ります。」


柳川を川下りされた後、熊本県に移動され熊本城をご覧になったとの事。

「熊本城を拝見したのはこの時が2回目でしたが…さすが築城名人の加藤清正が手掛けただけあり、見事な石積みでございました。」


代表が撮影されたお写真を拝見しても、やはり着眼点が「石積み」であることが一目で分かるほど…天守閣ならではの扇の勾配かつ緻密なライン。石積みをご存じない方がご覧になっても、その美しさはご確認いただけるかと存じます。


「震災で崩れて以降、同じ場所に同じ石を入れなければならないなど制約も多く、復旧にも時間がかかっていると伺っています。」


続いて阿蘇山、通潤橋、そして水前寺成趣園(じょうじゅえん)へと参ります。


「嘉永7年・1854年に造られた水路橋・通潤橋は、当時水不足に困る白糸台地に水を送るために作られたとの事。現在でも用水路は現役で農業を支えているとの事で、非常に感慨深いものがございます。

水前寺成趣園は、3代目熊本藩主綱利公の時代に完成されたそうで、池を中心とした海遊式の庭園です。借景で富士があるのも特徴的ですね。成趣園に限らず、借景のあるお庭で富士山を用いる所は多くございます。日本人にとって憧れの象徴なのだな…という事を思わされますね。」


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「宮崎県・高千穂峡を訪れた後に、6月3日は御手洗さんと合流し大分県で手掛けられたお庭の数々を見せて頂きました。最初にお伺いした‘志賀さん’というお医者様の持つ別荘は御手洗さんの作品の中でも代表作で、『庭』という雑誌で掲載されたほどです。」


筆者もお写真を拝見しましたが、それはお庭でなく‘自然の山中’かと見紛う程の風景でした。石の配置や植栽の一つ一つが、まさに我々の思い浮かべる‘自然そのもの’なのです。


「また、この庭の素晴らしい所は建物を建てる前にこの庭を作り上げたところです。建物の配置やそこからの景観を想像し作庭するのは至難の業…ですが、御手洗さんはそれをやってのけておられる。さらに驚くことに…このお庭、とても広く見えるのですが実はお隣と近い断崖絶壁のところにあるお庭なのです。大きな石で土留めを施しながら滝を流しています。」


そのような条件の元、まるで森の奥へと続くかのような仕上がり…見事の一言に尽きます。また、こちらのお庭露天風呂と池が繋がっているらしく、その一体感も個性的でユニークだと代表は語ります。


「別荘から車で15分程走った所に志賀先生のご自宅がございます。こちらも5トンはある石が大胆に配されていて、個人宅のスケールとは思えない程の仕上がりです。」


その後も御手洗さん作品の見学は続いて参ります。


「大分市の佐々木邸は御手洗さんの初期の作品で、今の作り方とは様相が異なります。具体的に申し上げますと…御手洗さんは落葉樹を中心に植栽されるのですが、この頃は常緑樹を多く使用されており、木そのものも仕立物が多く、自然の原風景というよりも山水画に近い印象のお庭に仕上がっております。

一方で、洞窟石積みや高低差のある滝などは御手洗さんらしさが感じられますね。滝のクオリティに関しては、年々緻密に、精密に仕上がっているように見受けられます。」


その後、移築してきた古民家をはじめ作庭中の民家(作庭中の庭を見られることはほとんどないので、とても貴重な機会だったとの事)、湯布院の別荘、高級旅館「やまだや」さん…など、様々なお庭で御手洗さんのお仕事を拝見されたそうです。


「露天風呂をはじめ、細かなところでは植栽を使用したコンクリートを隠す術や、曲がった木を使用した東屋の設計など、御手洗さんらしさを随所から感じられるひと時でした。

御手洗さんのお庭は破天荒な作品やインパクトの強い作品も多く、好き嫌いがはっきり分かれますが…‘庭とは何か’を改めて考えさせられます。


また、御手洗さんの作品をはじめ九州の様々な自然にも多く触れることの出来た研修会でしたが…やはり職業柄、自然の川などを見た際には‘どういう石の留まり方をしているのか’などに注目して見ていました。

‘どういうものが自然なのか’。それは、御手洗さんによって作られた作品からも、また九州の自然からも多くの学びを頂いたように感じます。」


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